クロスオーバー(Crossover)とは、ジャンルの垣根を乗り越えて音楽性を融合させるスタイルを指す音楽用語。
ジャズのクロスオーバー [編集]
1960年代頃に流行したジャズの演奏スタイルのひとつ。
歴史 [編集]
1960年代後半より、電気楽器やロック風な奏法を取り入れた、新しい演奏スタイルジャズ・ロックが生まれ、先鋭的なミュージシャンによって演奏スタイルの可能性が拡大された。そして、シンセサイザーをはじめとする電子楽器の出現で、音色などの演奏表現も豊かになった。クラシカルな曲想や、現代音楽的な音空間の表現のプログレッシブ・ロックも現れ、作品としてのジャズ演奏だけでなく、コマーシャルなポップミュージックやロックにも通じ相互に影響を受けたニューヨークやロスアンゼルスのスタジオ・ミュージシャン達の中から、より洗練された形で、ジャンルの垣根を乗り越えた(クロスオーバー)音楽が生み出されるようになった。
ストリングスやブラスのオーケストラとエレクトリック・ジャズのバンド演奏が巧みに絡み合うアレンジメントが重要な役割を持ち、デオダート、ボブ・ジェームス、ドン・セベスキーらアレンジャーが脚光を浴びた。またこのジャンルの作品を多く制作していたのが、ブルーノートでも評判を得ていた名プロデューサー、クリード・テイラーの主宰するCTIレコードで、先に挙げた3人のアレンジャー達自身のアルバムの他に、プレイヤーとして、ジョージ・ベンソン、ヒューバート・ロウズ、グローバー・ワシントン・ジュニアらが作品を発表している。
同時期にチック・コリア、ハービー・ハンコックらも、自らのバンドでさらに洗練されたクロスオーバー・ミュージックの作品を発表している。
代表的なアルバム [編集]
"Deodato2"デオダート
"Return To Forever"チック・コリア
ロックのクロスオーバー [編集]
ロックのクロスオーバーは時代や音楽性ごとに細かく区分されている。代表的なものにミクスチャー・ロックやクロスオーバー・スラッシュなどが挙げられる。
ロックが1960年代に発展する過程でブルースを発展させるだけでなく、主にクリームなど演奏能力に長けたバンドがジャズやクラシック音楽を取り入れてロックの概念を広げていった。それらはやがてレッド・ツェッペリンなどに代表されるハードロックやキング・クリムゾンなどに代表されるプログレッシブ・ロックなどとして大きく発展していくことになる。
ポピュラー音楽におけるクロスオーバーの一つの頂点が、パンク・メタルとも呼称されたクロスオーバー・スラッシュと呼ばれるジャンルである。1980年代に入ってロックがより過激なものになってくると、それまでのハードロックとパンク・ロックを強力に組み合わせたものが現れる。さらにそれがヘヴィメタルとも融合しだし、その音楽性はスラッシュメタルの要素を持つに至った。
もう一つの頂点は1990年代にブームが冷め切っていたヘヴィメタルとヒップ・ホップやファンクに代表される黒人音楽のクロスオーバーさせたジャンルで、ラップメタルやファンクメタルなど幾多のジャンルを生み出した。この動きは日本ではミクスチャー・ロックと呼ばれた。
クラシック音楽のクロスオーバー [編集]
クラシック音楽とポピュラー音楽がクロスオーバーしたサウンドは1990年代にブームが始まっており、クラシカル・クロスオーバーと呼ばれている。このジャンルの基本的なアレンジはオーケストラを生かしたポップス(ロックやエレクトロニカ等を含む)系の演奏をバックに声楽を活かした旋律を歌うものが多い。
このジャンルの起爆剤となったのはサラ・ブライトマンとアンドレア・ボチェッリのデュエット「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」(1996年)と見られている。この曲は全世界で2,500万枚以上を売り上げたとされ、このジャンルのスタンダードになった。またこれ以後追従する歌手が爆発的に増えることになった。増田いずみはこのジャンルをポップ・オペラ、またイル・ディーヴォはポペラと呼んでいる。音楽評論家の片桐卓也はこのジャンルの隆盛の背景として「クラシック界の中核を担う40、50歳代の音楽家は、若いころ、ごく自然にロックやポップスに親しんできた世代で、ポピュラー音楽を取り上げることに抵抗感のない人が多い」ことを挙げている[1]。
日本でのクラシカル・クロスオーバーの人気も近年とみに高く、日本でのこの分野の草分けとなった前述の増田をはじめ多くの歌手が活動している。2005年に本田美奈子.のアルバム『アメイジング・グレイス』が日本人歌手によるクラシック・アルバムとしては初めてオリコンチャートトップ10入り(7位)を果たし[2]、秋川雅史の「千の風になって」が2007年のオリコン年間シングルチャートで第1位となった[3]ことなどはその象徴と言える。カノンやYuccaなど若手歌手の活動も注目を集めるようになってきている。
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